面会交流について
2019年7月1日
「面会交流」、耳慣れない言葉かもしれません。
面会交流というのは、両親の別居や離婚などによって、両方の親と一緒に暮らしていない未成年者であるお子さんと、一緒に生活をしていない親との交流を意味します。親子の交流の方法としては、直接会う直接的面会交流の他に、手紙や電話等でやり取りを行ったり、写真を 送ったりする間接的面会交流があります。
従前、面会交流の根拠となるような法律上の条文はなく、父母が協議上の離婚をするときには「子の監護について必要な事項」を協議して定める、とされていただけで、「面接交渉権」として実務上認められているに過ぎませんでした。しかし、ちょっと古いお話ではありますが、平成 23年の民法改正(平成24年4月1日施行)により、「子の監護について必要な事項」の具体例として「父又は母と子との面会及びその他の交流」(面会交流)及び「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が明示され、「子の監護について必要な事項を定めるに当たっては子の利益を最も優先して考慮しなければならない」旨が明記されることとなりました。また、協議が調わない、又は協議できないときは、家庭裁判所がこれを定める、という規定も設けられました。あまりご覧いただく機会はありませんが、最近の離婚届用紙には、養育費や面会について合意がなされているかどうかのチェック欄が設けられています。
お子さんの監護については、両親の話し合いで取り決めをしていくことができれば、それがいちばんであると思います。それが困難である場合には、家庭裁判所の調停手続(話し合い)や、審判手続(裁判所に決めてもらう)を利用することができます。夫婦間で紛争状態である場合であっても、その紛争にお子さんを巻き込まず、良好な親子関係を継続して行くことが、お子さんの健全な成長、お子さんの利益に資する、という考え方から、家庭裁判所は、原則的として面会を認める方向にあります。原則があれば例外もあり、面会を制限すべき特段の事由が存在するときには面会交流を制限することも可能、といわれています。例えば、お子さんに対する身体的虐待がある場合、連れ去りのおそれがある場合等には、この特段の事由が存在すると認められることがあります。とはいえ、なかなかこの例外が認められるケースは多くありません。その点について思うところはありますが、紙面の都合もありますので、私の思いは横に置いておきます。
家庭裁判所の面会交流の事件数は、法改正以降、増加傾向にあります。肌感覚としても、非常に多いと感じています。夫婦間紛争のカードのひとつとして利用するのではなく、あくまでも、お子さんの福祉、利益を第一に考えて、話し合いや取り決めを行っていただきたいと強く望みます。ちなみに、感情的側面からすると、相手がやらないならやらない!といいたくなるものではあるのですが、養育費の支払と面会交流は、対価関係にあるものではありません。お子さんのためにどうするのがいちばん良いのか、という視点でみていくことが重要だ、ということになります。