変わる民法
2019年4月1日
平成29年5月26日、参議院で歴史的な決議がなされました。新しい民法の成立です。
一口に民法といっても二つのパートに別れています。所有権や契約などに関する財産法と、結婚や相続などに関わる親族法です。今回改正の主たる部分は、財産法のうち契約などに関する債権法です。
今使われている民法が制定されたのは明治29年です。当時の日本のエリートたちは欧米列強に追いつこうと、外国人の力を借りつつ、なんとか近代的な法律を整えたのでした。
戦後、従来からの「家」制度に立脚した親族法が改正されました。一方の財産法はそのまま残り続けました。さすがに漢文調は現代人に読みにくいということで平成16年に口語化されたものの、根本の部分は今日まで120年あまり日本社会の基盤となってきました。
明治時代に作られた条文には今の世の中にそぐわなくなってきたものもありました。時代に合わない条文については、条文を変えるのではなく、判例や学説が「解釈」によって新しい理解を示すことで修正してきました。しかし、解釈の余地のない条文もあります(「法定利率は5%」など。)。また、解釈だらけでは条文を読んでも一般国民には内容がわかりません。今回の改正によって、現状にあわせて条文が書き換えられ、整理されます。
今回改正されるのは200項目あまりに及びます。債権の消滅時効期間の変更や法定利率の引き下げなど、これまでずっと取引社会の前提とされてきた条文の変更も含まれます。古い民法で司法試験の勉強をした私たち弁護士にとっては一大危機(!)です。でも大丈夫、新しい民法が実際に使われ始めるのは、3年程度の準備期間を過ぎた後ですから・・・。みなさんもぜひ、新しい民法に注目してみて下さい。