ゴミ屋敷問題
2019年2月1日
最近、テレビのニュースや新聞の特集で「ゴミ屋敷」問題が取り上げられています。景観の破壊、放火や自然発火の危険性、不衛生(悪臭の発生、ゴキブリ・蝿・蚊などの大量発生、野良猫の住居化など)、倒壊(ゴミ山、建物)の危険など、「ゴミ屋敷」は多くの問題を発生させています。
近隣住民にとっては非常に迷惑な「ゴミ」ですので撤去処分をしたいところですが、本人にとっては大切な「所有物」ですので、迂闊に手を出してしまうと、本人の所有物を勝手に処分したことになり、民事上の損害賠償義務を追及される可能性があります。刑事上も、ゴミを勝手に処分してしまった場合には器物損壊罪(刑法261条、法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」)、また、ゴミを処分するために本人の承諾なく敷地に入り込んだ場合には住居侵入罪(刑法130条前段、法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」)といった犯罪にもなりかねません。
そのため、近隣住民としては自治体に「ゴミ屋敷」の解消に積極的に取り組んでもらいたいところですが、法治主義の下では、自治体も法令等の根拠がなければ立入調査もゴミの撤去処分もできません。現在は、「ゴミ屋敷」問題に対処するための法律はもとより都道府県レベルの条例も制定されていなく、いくつかの市区町村で条例が制定されているだけです。本人の人権にも配慮した適切な法令が整備されることが待たれるところです。
また、「ゴミ屋敷」を生じさせる背景には、HD(Hoarding Disorder)(溜め込み障害)・強迫性障害・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・統合失調症・うつ病・認知症などの本人の障害や疾患があると言われています。「ゴミ屋敷」問題の根本的な解決のためには、ゴミの撤去処分というハードな対応だけでなく、根っこにある本人の問題に対する福祉的ケアというソフトな対応も重要です。