相続の場面で預貯金の取り扱いが変わる?
2018年11月1日
平成28年12月19日に、相続における預貯金の取り扱いに関する重要な最高裁判所の判決が出ました。これまでの最高裁判所の考え方では、亡くなった方が生前金融機関に有していた預貯金については、相続が開始したとき(亡くなったとき)に当然に法定相続分で各相続人に分割されるとされてきました。
つまり、預貯金については、相続人が話し合って分け方を決めなくても、相続が開始したときに、法定相続分で相続されていると考えられるので、仮に相続人全員で金融機関に対して手続きをとらなくても、各相続人が、自分が相続した範囲で、個別に金融機関に払戻しを求めることができると考えられてきたのです。
ところが、12月19日の最高裁判所の判決で、この考え方が変更されることとなりました。預貯金について、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるとされたのです。今後は、相続の場面で預貯金の払戻しを受けようと思ったら、相続人全員で預貯金の分け方を決めた上で、金融機関に対して手続きをしなければならないことになります。
実際には、これまでも金融機関は、相続人全員から払戻しに同意する書類がないと原則として払戻しには応じない対応でしたし、また、相続人間で、他の遺産を分ける際の金額調整として預貯金も遺産分割協議を行うことが多かったので、窓口での対応が大きく変わるということはないかと思います。
ただ、今後、相続人の中に行方不明の方がいて遺産分割協議が難しい場合、相続人のなかに遺産である預貯金を緊急に必要としている人がいるけれども、他の相続人と払戻しについて合意ができない場合などに、これまで行ってきたように各相続人が単独で払戻しを求めることができなくなりますので、弁護士として、新たな対応を検討してゆくこととなります。