成年後見制度利用促進法
2018年9月1日
2016年4月「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立しました。成年後見制度はすでに多くの方が利用されており(まだ十分とは言えないかもしれませんが)、今後もその利用数は増えることでしょう。見ようによってはすでに「利用が促進」されつつあるようにも思えるこの状況であえてこの法律ができたことには、いったいどのような意味があるのでしょうか。その大きな意味は、3条1項に定められた「基本理念」にあります。
成年後見制度利用の際に重視すべきその基本理念とは、「成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び成年被後見人等の財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと」。
この法律は、この基本理念のもとで国や地方公共団体が成年後見制度利用促進に関する施策を行い、また関係機関が相互に連携を行っていくことを求めているものです。成年後見制度は高齢者等の保護のために必要な制度だと思いますが、ときに高齢者等の権利を「奪う」制度ではないかと批判されることがあります。そして、そのような批判にも当たっている面がないとは言えません。ニュースを賑わす不祥事を例に取るまでもなく、私たちはご本人支援として成年後見制度を利用する場合、常にご本人の「尊厳」を大事にして制度利用を行わなければならないのです。当たり前のことなのですが、今回法律でそのことが宣明、確認された意味は、非常に大きいと思います。
なお成年後見制度については今回、死後事務等について重要な法改正がなされています。機会があれば、そちらのお話しもしたいと思います。