「民法が120年ぶりに変わります」
2017年5月16日
2015年2月24日、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、現行の民法の中の債権に関する規定について抜本的に見直すべきとの要綱をまとめ、法務大臣に答申しました。今国会に法案が提出され改正が成立すれば、2018年を目処に施行されることになります。少し気が早いですが、私たちの暮らしに大きく関わる重要な法改正ですので、簡単に上記要綱の内容をご紹介させていただこうと思います。
今回の民法改正は、200項目以上の点にわたるもので、もし実現すれば、1896(明治29)年の制定以来じつに約120年ぶりの大幅な内容変更となります。
では、どのように変えようというのでしょうか。特に重要な点は次の6点です。
(1) 時効期間の統一。これまで債権の種類によってばらばらだった時効期間を、「権利を行使することができることを知った時から5年間」に統一する。
(2) 法定利率の変更。年5%から年3%にし、3年ごとに1%刻みで見直す。
(3) 個人が、企業や他の個人の事業資金借入の際にその保証人になることを、一定の範囲で制限する(本当に保証する意思があることを、公正証書で確認する)。
(4) 約款(業者が、不特定多数の消費者を相手に画一的な内容の取引をしようとするときに準備する条項)は、基本的に有効。ただし、消費者の利益を一方的に著しく害するときは無効。
(5) 買った物が欠陥品だったとき、これまで買主は、特定物(その物に注目して取引する場合。中古品やペットなど。)の売買であれば契約解除か損害賠償請求しかできなかったが、補修や代わりの商品を要求できるようになる。また、不特定物(新品や量産品の場合)も、これまでと違い、売主に落ち度がなくとも解除・損害賠償請求・補修請求・代替品請求ができるようになる。
(6) 賃貸人の敷金返還義務を明記。通常損耗や経年劣化については賃借人に原状回復義務がない(=その分を敷金から差し引いてはいけない)ことを明記。
これまでの民法は、取引の基本法として、取引当事者双方の交渉力が対等であることを前提としたものでした。交渉力に差がある場合については、商法や消費者契約法など、他の法律で別途調節することにしていたのです。しかし、今回の要綱では、上記(4)(5)のように、消費者保護の観点が各所に盛り込まれています。その点で、今回の改正案は、基本的・普遍的な法律という民法の性質を大きく変えようとするものといえます。今後、改正が実現したならば、私たちの日々の生活にどのような影響が生じるか、ある程度の緊張感を持って注視していく必要があると思われます。