障害者差別解消法
2017年2月1日
平成28年4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が施行されます。少し気が早いかもしれませんが、今後、施行に向けて耳にされる機会も多くなってくるかと思いますので、簡潔にご説明させて頂こうと思います。
障害者差別解消法(以下、「法」といいます)の目的は 障害者への差別をなくすことで障害のある人もない人も共に生きる社会(共生社会)を実現することにあります(1条)。ここでいう「差別」とは、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」をいいます。
「不当な差別的取扱い」とは、例えば、車椅子であることを理由に入店を拒否したり、精神障がいがあることを理由にアパートへの入居を拒否したりするような場合をいいます。「不当な差別的取扱い」は、役所においても、事業所等においても禁止されます(7条1項、8条1項)。
「合理的配慮をしないこと」とは、例えば、目の不自由な人に書類を交付するだけで読み上げなかったり、知的障がいがある人に分かりやすく説明をしないような場合をいいます(「合理的配慮」というのはなかなか抽象的ですが、個人的には「オーダーメイドのサービス」というようなイメージを持っています)。もっとも、「合理的配慮」は、役所においては実施しなければならないとされている(7条2項)のに対し、事業所等においては「実施のために努力して下さい」とされているにとどまります(8条2項)。
また、「法」は、「不当な差別的取扱い」をしたり、「合理的配慮」をしなかったりした場合であっても、直ちに罰則を課すこととはしていません(ただし、同一の事業所等によって繰り返し 障害者の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合などには、その事業所等が行う事業を担当している大臣が、事業所等に対して報告を求めることができることにしており、この求めに対して、虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりしたような場合には、罰則(20万円以下の過料)の対象になります(12条、26条))。
以上のような「法」の内容に対しては、もう少し踏み込むべきではないかとの思いもあります。もっとも、「法」の目的は、違反者を懲らしめることではなく障害者への差別をなくして共生社会を実現することにあります。そして、共生社会を実現するためには、法規制よりも市民全体の意識の向上が何より重要だと思われます。