選挙の原則について
2016年6月28日
今回のコラムでは、憲法の教科書に記載されている、選挙に関する基本的な原則についてご紹介したいと思います。理屈の話であまり面白くないかも知れませんが、この機に基本を確認してみましょう。
①普通選挙の原則
この原則は、財産や性別などに関係なく、誰にも選挙権が保障されるというものです。戦前は、一定以上の納税をしている男子のみ選挙権を有していました。しかし、これでは社会の一部の人の意見しか反映されません。憲法は、「成年者による普通選挙を保障する。」と定めています。
②平等選挙の原則
この原則は、普通選挙とはまた違った切り口で、「一人ひとり」の投票権の「数」、そして、投票権の「価値」の平等を求めるものです。特定の人だけ2票あったり、人によって投票権の価値が異なっては、やはり平等で適切な選挙をしているとはいえないでしょう。選挙の時期に、しばしば「一票の格差」が問題だとニュースが流れます。このニュースは、平等選挙の原則に関わるものです。
③自由選挙の原則
この原則は誰に投票するか、また、投票するかしないかも、その人の自由というものです。候補者の一覧を見て、誰にも投票したくないと思うこともあるかも知れません。その場合には、投票しない自由が保障されています。
④秘密選挙の原則
この原則は、誰に投票したかは秘密にするというものです。社会の中で弱い立場にある人は、事実上、強い立場の人から、誰に投票するか強要されることがあるかも知れません。その場合にも、誰に投票したか秘密にできれば、弱い立場の人を護ることができます。
⑤直接選挙の原則
この原則は、選挙権を持つ人が、候補者を直接選ぶことができるというものです。当たり前のように聞こえるかも知れませんが、制度としては、候補者を選ぶ人を更に選ぶ選挙、というものも考えられるわけです(これを「間接選挙」といいます。)。
なお、いわゆる「比例代表制」は、政党を選ぶものですから、直接、候補者を選んでいません。この点、最高裁判所は、大ざっぱにいうと、「投票の結果、誰が選ばれるかは自動的に決まるから」といった理由で、比例代表制は直接選挙の原則には反しないと判断しています。
このように理屈を見てみると、選挙制度が、いろいろな原則でとても丁寧に守られていることが分かります。