「ハーグ条約」について
2014年1月27日
今年度中に日本も加盟すると報道されている「ハーグ条約」、一体どのような条約でしょうか。「ハーグ条約」、すなわち「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」は、国境を越えた不法な子の連れ去りなどがあった事案について、迅速な手続により子を元々居住していた国に返還する手続を定めた条約です(1980年成立)。米国やEU加盟国、韓国など、90か国が加盟しています。
国境を越えた子の連れ去りがあればよく、子の両親が日本人であっても適用されます。想定される案件として、例えば、AB夫妻とその子Cが米国に住んでいたとします。Aが、Bの同意や裁判所の許可なく、Cを日本に連れ去った場合、片方のBは、日本の外務省に対して、Cを米国に返還するよう申請します。申請を受けた外務省は、Cの所在調査を行い、その後、裁判所がCを米国に返還すべきかを決めます。この場合、裁判所は、ABどちらの親が親権者としてふさわしいかを決めるわけではありません。あくまでも、その問題について本来審理すべき国にCを返還すべきかを決めるだけです。
ハーグ条約の下では、子の利益を考慮し、原則として返還が認められることになりますが、例外もあります。例えば、Cが16歳以上であったり、CがBから虐待を受けていて米国に連れ戻すことがCの心身にとって害悪になったり、C自身が返還を拒否したり、連れ去りから一年以上経過しCが新しい環境になじんでいたりした場合は返還が拒否されます。
ハーグ条約は様々なルールを定めており、これまで無法地帯ともいえた国境を越えた子の連れ去り案件に、きちんとした法と秩序が設けられた意義は大きいでしょう。