成年後見と選挙
2014年1月13日
平成25年7月21日は、参議院議員選挙の投票日です。
この選挙から、インターネットを使った選挙運動が解禁されるとともに、これまで、精神上の障害により財産を管理する能力を欠く常況にあるとして成年後見人がついた人(成年被後見人といいます。)が投票できるようになりました。
これまで、成年被後見人は、公職選挙法の定めで、一律に選挙権を失い、投票をすることができませんでした。
成年後見の制度が始まるまでは、「禁治産」という制度がありました。禁治産制度は、本人が財産を無駄使いしないよう、本人の権利を制約する視点で作られた制度でした。一方、成年後見の制度は、ノーマライゼーションの理念(本人の自己決定権を尊重し、いま有する能力を活かしつつできるだけ家庭や地域で通常の生活ができるような社会を作ろうという考え方)にそって、本人の能力を補うために、後見人が財産管理を本人に代わって行う制度です。このように、禁治産制度と成年後見制度では、根底にある考え方が異なります。禁治産の宣告を受けた人は、禁治産であるという理由だけで、財産管理以外にも100を超える様々な権利や資格が一律に制限されました。選挙権もその一つです。
禁治産制度から成年後見制度に移った際、それぞれの資格・権利制限を一つ一つ見直そうとの動きもありました。しかし、その動きはほとんど実現せず、選挙権をはじめとする多くの資格や権利が、それまでの条文にあった「禁治産者」を「成年被後見人」に置き換えられただけで、一律に制限され続けました。
今回の改正で、成年被後見人の選挙権制限は撤廃されましたが、障害を負った方の権利の擁護・回復は、まだまだ十分とはいえません。あるときは現在の法律等で利用できる制度を用いて権利の確保を図り、またあるときは、権利や資格を制限する規定が間違っていると声をあげる役割が、弁護士に期待されています。その期待にお応えできるよう、私たち弁護士も、いっそう研鑽に努めていく所存です。