成年後見制度の理念-ノーマライゼーションと後見人の職務
2013年12月30日
成年後見制度とは、精神上の障害(精神病や認知症等)により、判断能力が低下している人が、財産を適切に管理し、自己決定権を尊重されながら生活できるための制度です。
成年後見制度は、平成12年、介護保険制度等の福祉サービスと共に、被後見人等(後見制度の対象となる高齢者や障害者)の自己決定権を尊重しながら、判断能力が低下している人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作ろうというノーマライゼーションの理念を実現するために誕生したと言われています。
成年後見制度の理念である「ノーマライゼーション」と言うと、障害者も高齢者も自宅で、障害のない人や若者たちと同様の生活を送っているイメージを抱くかもしれません。
しかし、現実には、日本では、他の先進諸国に比べ、障害者や高齢者が施設で暮らしている割合が高いと言われています。
家族などの周囲の方々が、介護等に疲れてしまい、施設入所させる例もあるかもしれません。
他方で、障害者・高齢者自身が、自分の判断能力が低下したときに周りに迷惑をかけたくない、と施設入所を希望する例も多いと聞きます。
ただ、高齢者・障害者の方が心配する「周りへの迷惑」は、実際のところ、在宅介護サービスが充実し、後見人による身上監護・財産管理が健全に機能していれば、相当予防できるように思えます。
一昔前は「介護も後見も、身内でなんとかするもの」という考えがあったかもしれませんが、この超高齢社会、身内が遠方に住んでいる場合にまで、家族が介護や後見を全て行うのは無理があります。
介護サービスの充実はもちろんですが、高齢者・障害者の親族など周囲の方々が、上手に後見制度を利用し、必要に応じて弁護士等の専門家後見人をご活用いただければ、家族など周囲の方々の負担が軽くなり、高齢者・障害者であっても、施設入所をせずにご自宅での生活を続けることが実現できるかもしれません。
「障害者でも高齢者でも、在宅介護が可能な限りは、できる限り家にいたい」というのは、多くの方の本音ではないでしょうか?
人は誰でも年をとるし、病気や事故で障害を負う可能性もあります。
現実を制度の理念や理想に近づけるためには、福祉関係者のみならず、後見制度の担い手となる法律専門職らの不断の努力が求められるところですが、誰もが当事者となりうる成年後見制度を活用するために、必要な事態が生じたときは、早めに弁護士事務所にご相談されることをお勧めします。