交通事故とADR
2010年12月1日
交通事故には,
①被害者と加害者の間の損害賠償の問題となる民事関係,②加害者に対し刑罰を加える刑事関係,③加害者の免許についての行政関係の三つの側面があるといいます。
今回は,三つの側面の①民事関係を解決する手法のうち,更に「ADR」という手法について説明したいと思います。
紛争を解決する手段として,もっとも一般的な,かつ,慣れ親しんだ方法は,「当事者同士の話し合い」でしょう。しかし,当事者同士では感情的になってそもそも会話もできなかったり,意見が対立して話し合いでは到底解決の見込みがなかったりすることも少なくありません。そこで,古今東西,様々な社会は,当事者同士の話し合い以外の様々なトラブル解決方法を発明してきたといえるでしょう。そして,その解決方法の一つであり,もっとも権威があり丁重なものが,公的機関が法律にのっとって結論を出す「裁判」という方法だと思います。
しかし,「裁判」は,権威もあり手続きも厳格ですが,それだけに裁判に慣れない方には面倒臭い,あるいは取っつきにくい面もあります。また,厳格さゆえに時間もかかります。そこで,トラブルを解決する方法としては,裁判以外のものがあります。これを,英語で「ADR(alternative despute resolution)」,日本語で「裁判外紛争解決手続き」と呼んでいます。
さて,交通事故は,残念ながら日常的に珍しいものとは言えません。そのため,交通事故に関しては,迅速で,しかも専門性を備えた解決方法として,ADRがとても発達しています。
具体的には・・・
①(財)日弁連交通事故センターという日弁連が協力している組織が全国にあり,交通事故に詳しい弁護士が無料相談を行っています(東京相談所:東京都千代田区霞が関1-1-3弁護士会館内 tel03-3581-4724,立川相談所:立川市曙町2-37-7コアシティ立川12階 tel042-548-7790)。
②また,全国数カ所に(財)交通事故紛争処理センターという組織もあり,ここでも弁護士による無料相談が行なわれています(東京本部:03-3346-1756)。
③その他,全国の各弁護士会が「弁護士会仲裁センター」という組織を作って紛争の「仲裁」や和解の「あっせん」をしていたり,
④(財)自賠責保険・共済紛争処理機構という自賠法に基づく機関も「調停」業務を行なうなどしています。
どの機関もそれぞれの長所があり,提供しているサービスの内容も少しずつ違います。
もし,皆様が交通事故に遭われてしまった場合には,法律相談をご活用頂き,保管しておくべき証拠類や,紛争解決への道筋などについて弁護士にご相談ください。