「敷金と更新料」 消費者保護へ
2010年1月8日
建物賃貸借につきものの敷金と更新料について、消費者契約法を根拠に特約を無効とする判決が増えています。建物を貸している人も、借りている人も必読!
■ 消費者契約法とは
事業者に対して不利な立場に置かれている消費者を、包括的に保護する目的で平成13年4月から施行された法律です。契約時に相手方に誤認行為や困惑行為があれば契約を取り消すことが出来ます。また、消費者に不当に不利益な契約条項に対しては、無効を主張することが出来ます。
■ 敷引特約の無効
敷金(保証金)は、契約終了時の未払い賃料や損害金を担保するもので、更新ごとに一部償却するという契約もよく見受けます。
しかし、平成20年の判決では、2年契約の敷金(保証金)35万円の内30万円を解約時に差し引くという特約を無効としました。30万円は家賃5ヶ月分に相当する高額であり、民法その他の規定に比べて、消費者の義務を加重した不当な特約というのがその理由です。
このケースでは、30万円は無条件で差し引かれるので、残り5万円だけが清算の対象となり、借主にとってきわめて不利益な特約といえます。
■ 更新料特約の無効
更新料特約については、首都圏ではよく見受けますが、全国的には例外的であり、国交省推奨の賃貸住宅標準契約書や公営住宅には更新料の定めはありません。平成20年の判決では、2年契約の更新ごとに家賃2ヶ月分の更新料を支払うという特約を無効としました。更新拒絶の正当事由の有無に関係なく支払いを強制されていること、法定更新ではそもそも支払い義務がないというのがその理由です。
このケースでは、2年ごとに更新料2ヶ月分というのは高額であり、借主には契約時に特約を拒否することは事実上不可能であることから、無効はやむを得ないと思いますが、低額の更新料特約について、無効ではないとする判決もあってまだ流動的です。
■ おわりに
消費者保護を強化する法律がいろいろ制定されています。従来は問題なく合法とされてきた契約条項も、もう一度新しい視点で見直すことが必要です。
また、個人情報保護に関する条項の新設も重要です。
定型的書式についても、弁護士に相談して見直してみてはいかがでしょうか。